外傷性頚部症候群


  外傷性頚部症候群とは,労働災害や交通事故などの外傷によって起こった頸部周辺の呼ばれる疾患を言います。かつて ”むちうち損傷”とよばれマスコミでも大きく取り上げられ重篤かつ予後不良な疾患と考えられた時期もありました.昭和40年代に追突事故などの際にくびが猛獣使いのむちのように前後にしなって振られるため”むちうち”といわれていました。しかし車にヘッドレストが搭載されるようになってからは、そのようなくびの過伸展は生じないことが医学的に証明されています.かつてみられた脊髄内部が裂けたりするような損傷はみられなくなったものの、近年の交通事故の増加により頚部痛を訴えることは増えてきているのが事実で、むちうち損傷とよばれる病態がなくても頸部痛が起こることも証明されています.

ヘッドレストが装備されバンパーがへこまない程度の衝突でも発症し,慢性化遷延化することもあります.頸部が過伸展しなくても生理的可動範囲内での運動でも起こりうると言われています.(平林(元慶応大教授)ら,1999)


定義
むち打ち
( whiplash )
とは、主に自動車衝突事故において、あるいは飛び込み事故や偶発事故において、後方あるいは側方からの衝撃で頚部へもたらされるエネルギー転移が加速ー減速メカニズムで生じることをいい、むち打ち損傷
( whiplash - injury )とはエネルギー転移が骨あるいは軟部組織損傷をもたらしたもので、そこから多彩な臨床症状、自律神経症状の合併例を特にあらわすものを外傷性頚部症候群 ( whiplash - associated disorders )という。

分類

 土屋の分類(1968)
1.頚椎捻挫型:頸部の筋の過度の伸張か部分断裂の状態で頸部周囲の運動制限,運動痛が主症状。神経症状なし。予後良好で大部分がこのタイプ。
2.根症状型:神経根の症状が明らか.1.に加え知覚障害,放散痛,反射異常,筋力低下などの神経症状を伴う。
3.バレー・リュー症状型:頭痛,耳鳴,眼の疲労,吐き気をともなう。
4.混合型:2+3
5.脊髄症状型

 事故後の頸部症状を土屋(元横浜市大教授)らが5つに分類していますが,外傷性頚部症候群はこのうち3.バレー・リュー症状型に当てはまります.椎骨神経(後部交感神経)の刺激状態によって起こるとされ頸部脊髄症(C4〜C6の骨棘形成)が原因とされていたが、MRIなどでも病変の認められない場合も多いとされています.
医療法人社団成山会山の上クリニック



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