頚椎捻挫・外傷性頚部症候群の治療

ケベック分類は, むちうち損傷における医療経済面の問題の重大さが欧米で問題とされたため,カナダケベック州自動車保険協会の要請のもとにケベックむち打ち症関連障害特別調査団が当疾患の種々の問題について科学的解析を行ったものです.重症度に応じて治療が異なります.

また急性期と慢性期でも治療が異なってきます。急性期には局所(頸部)の安静が大切です。慢性期に入ってから理学療法,.運動療法を積極的に行います.時に他人に傷害されたと言う被害者意識などの心理的要因が加わるため,抗不安薬,抗うつ薬が効果的なこともあります.

ケベック報告によるWhiplash - Associated DisordersWAD)の臨床分類 ( 1995 )

Grade0.頚部に訴えがない

     徴候がない

GradeT.頚部の痛み、こわばり、圧痛のみが主訴

     客観的徴候がない

GradeU.頚部の主訴と筋・骨格徴候※1

    (頭、顔面、後頭部、肩、腕への非特異的ひろがり)

GradeV.頚部の主訴と神経学的徴候※2

    (神経学的・徴候を伴う可動制限)

GradeW.頚部の主訴と骨折または脱臼

※1:筋・骨格徴候には、可動域の制限と圧痛を含む。

※2:神経学的徴候には、腱反射の減退または消失、脱力と感覚障害を含む。

※:すべてのGradeで出現しうる症状や障害には、耳が聞こえない、めまい、耳鳴り、頭痛、記憶喪失、嚥下障害、側頭下顎関節痛などを含む。

●急性期

局所の安静:短期間(3日以内)に限って頚椎カラーを装着し、局所(頸椎)の安静を図る

嘔気や嘔吐、めまいが強いときは、数日の安静臥床(頻度は少ない)

薬物療法:消炎鎮痛剤,筋弛緩剤

理学療法:ホットパックなどの温熱療法

●慢性期

薬物療法:消炎鎮痛剤よりも,筋弛緩剤,抗不安薬,抗うつ薬が効果的なこともあります.

理学療法:温熱療法,牽引療法,運動療法を開始します.

ブロック療法:トリガーポイント注射,椎間関節ブロックで痛みを軽減します.

■損傷が軽度の場合(ケベック分類のgrade T,U)

@安静の必要はなく,湿布や消炎鎮痛剤を処方。

Aできるだけ早期に正常の活動に復帰させる

■損傷が中等度な場合(ケベック分類のgrade V)

@頸椎カラーなどで短期間局所の安静をとり,薬物療法

A神経学的異常を示す原因を究明

B日常生活上長時間の読書やテレビ鑑賞を控える

■損傷が高度な場合(ケベック分類のgrade W)

骨折脱臼の治療を行う

 

 

X線写真 

頸椎不安定症( 後屈時C5椎体の後方転位をきたす)

 医療法人社団成山会山の上クリニック